【第6回】「すぐに使える“相互尊重”のコミュニケーション」
職場でのコミュニケーション、気持ちよくとれていますか?
必要以上に強く言い過ぎて後悔したり、言いたいことがあるのに言えずに残念な思いを抱いたり。「もう少しどうにかならないか」と思っている人は少なくありません。
発展的で協調的な“相互尊重”コミュニケーション力を高めて、難しいと思う場面にも、臆せず声を出してみましょう。
今回は、日々の職場で起こり得る場面を想定して、すぐに使えるヒントをご紹介します。
相互尊重コミュニケーションの基本は、「誰でも、したいことはしたいと言っていいし、したくないことはしたくないと言っていい」ということです。そうは言っても、仕事の場でのコミュニケーションですから、相手と自分では立場も専門性も利害も異なります。ただ思った事をそのまま口に出せば良いという訳ではありません。正しく自己主張したいけれど、いざ言おうと思うと遠慮し過ぎてしまったり、遠回りに言ってかえって印象が悪くなる、あるいは思ったより強く言い過ぎた。こんな経験はないでしょうか。挙句の果てに、「難しいから黙っておこう」では、後悔が残ったり、結果、仕事が前に進まなくなってしまいます。場面・目的別に、良い例、上手くない例をまとめました。普段の自分の「話し方」はどうだったか、振り返ってみましょう。
場面、目的別の良い例、上手くない例
周りからの評価が変わる
どんな用件で、どれくらい時間が欲しいのか、話があるときは、まず初めに伝えましょう。言われた側が判断しやすくなる配慮があるので、結果、相手から「YES」がもらいやすくなります。
苦手、嫌い、分からないといったマイナス表現は、別角度から捉えて言葉を選びます。同じ状況でも随分と印象が変わります。
同じような話で差がつく、信頼される人・信頼が得られない人
話の切り出しは、遠慮からくる遠回りな前置きをなくし、シンプルにかつストレートに伝えます。気に掛けたいのは、相手にこちらの話を聞く理由を“渡す”ことです。「つまらないものですが…」では、聞く気が失せてしまいます。
相手が話を聞きたくなる理由を伝える為には、日頃からその人の優先順位を把握しておくことが大切です。クオリティ重視の人なのか、コストカットが命題なのか。本気で相手に目線が向いていれば、何を冒頭に持ってくれば良いかはすぐに見つかります。「厳しいのは承知の上ですが」「お忙しいところ申し訳ありませんが」といった正しいクッション言葉と、「~して頂けませんか」という依頼形を使うことで、より伝わりやすくなります。自分の為の言い訳ではなく、相手の為のクッション言葉を用意しましょう。
上手にNOが言えると、逆に信頼される
反対意見を述べる時は、賛成・共感できるところを具体的に伝えて、部分的に異なる意見を持っているところを懸念事項として表明し、自分自身のアイデアを提案します。「全体的にはOKなんだけど…」「基本的には賛成なんだけど…」といった曖昧な表現ではなく、どの点に賛成なのかを具体的に伝えることで、相手は「受け止められた」という実感がわきます。
感謝や褒め言葉こそ事実ベースで伝える
上手ですね、さすがですね、は、相手を見ていなくても、聞いていなくても言える褒め言葉です。聞いた相手は悪い気はしなくても、心に残る褒め言葉にはなりません。褒める際のポイントは、
の3点です。
自分の気持ちに近い言葉を声に出す-この単純明快なことが、実際は簡単ではありません。特に、仕事の場では上下関係や利害関係が邪魔して、思ったとおりのことが言えないことも多々あります。そんな悩みを克服する為に、まずは、日常の簡単な場面で自主練することをお勧めします。いきなりストレスのかかる難しい場面で自分の気持ちに近い言葉をストレートに声を出すのはハードルが高過ぎます。
試しに、「すみません」を場面に合わせて、「ありがとう」「助かりました」「恐れ入ります」「申し訳ありません」「ごめんなさい」などの、自分の気持ちに近い言葉に変えてみることから始めませんか?
相互尊重のコミュニケーション、すなわち、発展的で協調的な正しい自己主張。自分が肩の力を抜いて素直にストレートに表現できると、相手も聴きやすいものです。「こんなこと言ってはいけない」「言っても無駄」などと思いこまずに、逆に、「絶対言わなきゃ」「間違ってる!」などと決めつけずに、相手の立場、思いも尊重したコミュニケーションを目指しましょう。
著者プロフィール
大串 亜由美
外資系大手コンピュータ株式会社にて14年勤務後、コンサルティング会社勤務を経て、株式会社グローバリンクを創立。「国際的規模での人材活用、人材育成」をキーワードに、マネジメント、自己主張など、ビジネスコミュニケーション全般の、企業・団体研修、各種コンサルティングを手がける。