あかるい職場応援団
厚生労働省

「社内でハラスメント発生! 人事担当の方」【第27回】「実際の相談案件がきっかけでさらなる取組みへ」 ―金属表面処理薬品の開発・製造・販売を手掛けるS社

【第27回】
実際の相談案件がきっかけでさらなる取組みへ ―金属表面処理薬品の開発・製造・販売を手掛けるS社

取組のポイント 所在地

京都府

  1. 全体朝礼で社長からメッセージを発信
  2. DVDを教材に研修
  3. 窓口への相談案件を受けて取り組みを見直し
業種

化学工業

従業員数

約80人

アドバイザーからのアドバイスを受けて働きやすい職場環境づくりに取り組み始めたというS社。その一環で始まったキャリアカウンセリングとうまく協力しながら、ハラスメントへの取組みを進めてきました。
総務で相談窓口も担当している方からお話しを伺いました。

子育て支援から始まった働きやすい職場づくり

平成11年、女性社員の出産を機に、社員が仕事と子育てを両立できるように、ということで子育て支援やワークライフバランスに取り組み、働きやすい職場作りを目指してきました。その流れの中で、3年前にキャリアカウンセリング室を設置し、月1回、カウンセラーの方に来ていただくようになりました。テーマは特に決めていないのですが、全員が順番に面談を受ける形にし、仕事の状況などを確認してもらっています。その中で問題がありそうな内容については、従業員の了解を得て、総務に報告をしてもらい、会社として対応が必要なことは役員に上げることになっています。
こうした中でハラスメントについての問題意識が出てきて、社長や役員の指示で取組みを始めました。

社長から全体朝礼で基本方針を説明

最初に社長を始め、管理職を対象にした研修を実施しました。まずは役職者の意識をそろえるということです。それと並行して就業規則にハラスメント防止に関する規定を設けたうえで、詳細を規定する「ハラスメント防止に関する規定」を作成しました。
規定も整備できた段階で、全体朝礼の機会に社長から「ハラスメント防止・根絶に対する基本方針」を説明してもらいました。この社長方針や規定は社内の掲示板に掲示するとともに、イントラネットにも掲載して、社員はいつでも確認できるようにしています。
また、タイムカードの打刻器の上にポスターも掲示し、周知広報に努めています。

ハラスメント防止に関する規定」

PDF(0.28 MBytes)

社員にはDVDで研修。その後のアンケートで実態把握

その後、一般社員向けの研修を行いました。DVDを鑑賞してから講義を受けるという形です。講義ではパワーハラスメントにはどのような行為があるのか、ハラスメントと指導の違いや被害を受けないコミュニケーションの方法などについて話してもらいました。会場が食堂だったこともあり、リラックスした雰囲気の研修でした。
研修の終わりに、無記名で「職場環境調査」というアンケート調査を行いました。パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに関して、該当するような行為を受けた経験や見聞きしたことがあるかなどをチェックすると同時に自由記入欄を設けて、何でも気づいたことがあれば書いてもらいました。
実際に問題として取り上げなければならないような事案はありませんでしたが、過去にあった問題や、周囲で見聞きしていることで問題と思われるようなことなどの記入があり、実際に何かしら課題はあるのだという感触を得ました。

研修
DVD
職場環境調査

PDF(0.33 MBytes)

職場環境調査

PDF(0.35 MBytes)

相談窓口としてしっかり対応するためには研修が必要

社長の基本方針の中で、相談室の設置と相談員の氏名、連絡先も明確に定義されました。社内の相談窓口は総務課が担当し、外部の相談窓口として毎月来社されるキャリアカウンセラーにお願いしました。
窓口を設置して2年が経ちます。周知や、取組み方はこれでよいのかなど不安な面もありました。そんな中でパワーハラスメントについての相談が窓口に寄せられるようになり、不安に思う中、まずは窓口が認知されていたということでほっとしました。
ハラスメントの内容としては、上司と部下、同僚間でのことなどさまざまで、当事者、周りの社員を含めコミュニケーション不足や職場環境の問題が大きく影響しているのではと感じました。
相談窓口の対応としては、まずキャリアカウンセラーの方と相談しながら、関係者のヒヤリングを実施して上司に報告し、その後当事者間の話し合いで解決していく方針で進めています。
相談を受けるときは、日頃の人間関係によって印象も大きく変わるので、相談担当者として偏見を持たずに話を聞くことが大切だと思います。また、慎重に対応しようとして時間がかかってしまうと、相談者は放っておかれたような気持ちになり、不安が募ってしまうということもあります。相談担当者自身も、研修を受けて、しっかりした対応ができるようにしておくことが必要だと実感しています。

継続した取組みできめ細かく対応したい

社員研修も1回実施した後、しばらく間が空いてしまいました。今年は再度、研修などの取組みを始める予定です。また、相談を受けた後の、問題解決に向けた仕組みも整備する必要があると思っています。今後も、キャリアカウンセラーなどの協力も得ながら、もっときめ細かく取り組んでいきたいと思います。

事例をお聞きして・・・

規定を整備し、トップからのメッセージの発信、社員研修、相談窓口の設置、と一通りの取組みを実施したのですが、具体的な相談案件が発生して、取組みを見直すきっかけになったということでした。実際の案件に直面して、取組みのむずかしさや深さを実感したことで、今後の施策もより現実に即した、実りのあるものになることが言葉の端々から伝わってきました。
また、社会保険労務士やキャリアカウンセラーなど、第三者の意見をうまく取り入れながら進めておられることで着実な取組姿勢が感じられました。

≪ 【第26回】「利用者からのハラスメントが課題」 ―在宅介護を中心とした介護支援事業を展開するP社  |  【第28回】「職場環境改善は労働組合のミッション」 ―K総合病院の職員組合 ≫