【第16回】
トップの指針が取組を支える ―ブランドを大切にする老舗ホテルのZ社
取組のポイント | 所在地 |
東京都 |
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業種 |
ホテル業 |
従業員数 |
約900人 |
世界中からお客様をお迎えする東京の老舗ホテルの一つであるZ社。「名前だけでなく、中身までしっかりしたブランドが大切」とおっしゃる執行役員管理部長にお話を伺いました。
事案の発生がきっかけ
数年前、社内でパワーハラスメントに該当する事案が発生し、会社としてハラスメントを許さないという経営指針の下、社内教育やパワーハラスメントへの対応体制を整備しました。
何がハラスメントなのかを定義
社内では昔から先輩の厳しい指導の中で、仕事を体で覚えるというところがあり、その中で育った人たちが今度は指導を行う立場になり、若い人に対して、自分たちが受けてきた指導と同じような指導を行った場合に、若い人がそれをパワーハラスメントと感じてしまうことがあります。そのため、会社としてハラスメントを定義し、パワーハラスメントに該当する例や該当しない例を盛り込んだハラスメントの防止指針を作成しました。また、就業規則を変更し、服務規定や懲罰規定にハラスメントの禁止や処分に関する内容を盛り込みました。
こうした内容は新入社員の導入研修や社員の節目の研修の中で取り上げて教育しています。ハラスメント研修は、オープン講座とし、全社員に実施案内を出し、研修対象者以外でも積極的に参加するように促しています。
心のサービスステーション
社員からの相談を受けるヘルプラインを4種類用意しています。
1つ目は職員人事等を担当する管理部の管理職が対応するヘルプライン。2つ目は女性の相談員が話を聞くヘルプラインF。3つ目は育児や介護を含め様々な相談を受け付ける相談窓口。これらはいずれも内線・外線電話、FAX、e-mail、郵便などあらゆる手段で受け付けます。
そして4つ目が相談ポスト。ポストは社員食堂付近に設置していますが、投函する姿が分かりにくいように配慮しています。
窓口の一覧は、心のサービスステーションとして、ハラスメント防止指針と一緒に社員食堂に掲示するとともに社内イントラネットでも案内をしています。こうした窓口には年間4~5件のさまざまな相談があります。
また、年に一回、全社員を対象に実施する人事調査シートで希望するキャリアとともにハラスメントについての質問項目や自由記入欄を設け、上司を介さずに直接人事に提出する仕組みを取っています。このアンケートにも、毎年数件のハラスメントに関する記述が上がってきます。
事案への対応を徹底的に
会社としては、社員に対し、自社の経営理念、運営ノウハウを教えることで人材を育てています。そんな貴重な人材がパワーハラスメントによって退職したのでは、対応に費やす労力やゼロから人材を育てる負担がかかり、そのしわ寄せは現場に行くことになります。その結果、何よりお客様にご迷惑をおかけすることになってしまいます。パワーハラスメントをなくしていくためには、相談などの事案には徹底的に対応し、プライバシーに配慮しつつ、会社として何らかの結果を出したことが分かるようにしています。ただでさえ悩みを相談することは躊躇されがちですので、安心して会社に相談できる環境づくりが大切です。「会社に訴えても無駄」と諦めさせないように最大限対応しています。
事案が発生すると、自分の部下が加害者となった場合、上司はその部下を守ろうとしがちですが、そういう場合にも毅然として対応できるのは、トップがしっかりと指針を示してくれているおかげです。
事例をお聞きして・・・
職人気質の残る現場で、先輩から受け継いだ指導方法を変えていくのに苦労をされている様子がうかがえました。会社の方針が明確であるからこそ、様々な事案に対しても徹底的に対応していけるという担当者の言葉には重みがありました。