【第4回「こんな場面のコミュニケーション-迷惑行動にNOと言う」
職場でのコミュニケーション、気持ちよくとれていますか?
必要以上に強く言い過ぎて後悔したり、言いたいことがあるのに言えずに残念な思いを抱いたり。「もう少しどうにかならないか」と思っている人は少なくありません。
発展的で協調的な“相互尊重”コミュニケーション力を高めて、難しいと思う場面にも、臆せず声を出してみましょう。
今回のテーマは、「NOと言う」。
必要な時には、余計な罪悪感なく「NO」が言える。日常の仕事を正しくスムーズに進める為にも、自分自身を正しく尊重する為にも、大切なことです。
必要ではあるけれど、実際には、これが難しいと苦手意識を持っている方が少なくありません。「NOと言ったら悪いんじゃないか」「NOと言ったら嫌われるんじゃないか」…強過ぎる思い込みからブレーキを踏むことも、NOを言いづらくしている原因の一つではないでしょうか。受身的過ぎたり、時に、攻撃的になり過ぎたり。バランスが難しいとお考えではありませんか。
他の部署から無理な協力依頼。こちらも忙しくて、100%のYESを渡すことができない。こんな場面での三者の違いを考えてみましょう。
攻撃的な対応:「無理ですよ。時間も予算もないし。第一、人がいません。」-頼んだ側が受ける印象は、「冷たい」「感じが悪い」。二度と頼みたくないと思うでしょうし、逆にそんな相手から頼まれた時には、気持ちよく手伝えないかもしれません。部署を超えた協力体制は期待できなくなり、長い目、広い視点でのデメリットは大きくなります。次に一切つながっていなし、理由を言っているようで理由になっていない、というのが問題点です。
受身的な対応:「お手伝いしたい気持ちはあるにはあるんですが。私一人では決められないので、チームで相談してみますが…。難しいかもしれませんが。あ、でも、何とかはしたいのですが…。」-印象は、「で、どっちなの?」「はっきりしない」といったところでしょうか。手伝ってもらえるのかもらえないのか判断がつかないので、待たされるというデメリットが生じます。仕事上の迷惑度という意味ではこちらの方が大きいのではないでしょうか。自分一人で決められないとしても、少なくとも、いつ、誰が答えるかの明示は必要です。
きちんとNOと言うためには、まず、次の4点を確認します。
- Win-Winの姿勢があるか?
面倒だから、相手のことが好きではないから…なんていう理由のNOになっていませんか? - 相手目線の理由がありますか?
- 代替案が示せますか?
- 不必要な言い訳に終始していませんか?
「NO」を勧めている訳ではありませんので、誤解のないようにお願いします。できることなら、多少の無理をしてもYESと言いたいものですが、その無理が大き過ぎて、自分が押し潰れてしまっては元も子もない、ということです。「断ったら悪い」という思い込みが、かえって相手を窮地に追いやらないように、お互いのデメリットを最小限で抑える-正しいWin-Win目線での、100%引き受けられない場合の対応策を考えてみましょう。
正しいWin-Win目線での、100%引き受けられない場合の対応策
1. 条件提示
相手の要求に100%応えられないとしても、80%なら、あるいは、70%ならできるということを伝えます。「7人は出せないけど、3人なら」「うちは予算が厳しいのでコストをチャージして良ければ人は出せます」など。その条件では、相手は「だったら結構です」となるかもしれませんが、それはそれでやむを得ません。ポイントは、出し惜しみをしないということ。どうせ引き上げられるから、低めの設定から提示しよう…なんて姑息なことは考えず、現状で出し得るベストオファーを伝えましょう。
2. 代替案の提示
どうにも忙しくて、依頼されたことに直接手は貸せないけれど、他のところで手伝えないでしょうか。「ちょうど良い参考資料があるからお貸しします」「同じようなプロジェクトをまとめたファイルがあります」といったほかに対応できることを伝えましょう。
3. 次の機会を明示
今回は無理でも、仕事は一度限りではないので、次につなげたいという意志を伝えましょう。但し、「そのうち」「いつか」といった、単なる社交辞令にならないように。「月初はたいてい忙しいので、何かあったら月中をねらってみて下さい」「シフト勤務ですので、今日明日では対応不可能ですが、10日前に言って頂ければ」と、本気で次を考えていることを伝えましょう。
4. 他のリソースを紹介
自分よりもそのことに詳しい人、多少なりとも手の空いていそうな部署、使い勝手のよい外部業者など、相手の力になりそうなリソースを紹介できないか考えてみましょう。タライ回しではなく、あくまで、「紹介」です。「あの人ヒマそうですよ」なんていう無責任な情報提供では混乱を招きます。一本電話をしたり、メールする。アクションを伴って、つなぐところまでして初めて、紹介です。
5. 半端なYESを渡すことのデメリットを丁寧に説明
できれば、1~4のいずれかの対応をとりたいですが、どれも無理となったら、最後はきちんと断ることが必要です。「ぜひお手伝いしたいのですが、あいにく、こちらのプロジェクトの締め切りも3日後にせまっていて厳しい状況です。半端にお引き受けすると、納期間近になってかえってご迷惑をおかけすることになりそうです。残念ですが、今回はお断りした方が混乱が少ないと思います」―大切な点は、シンプルに、丁寧に、ということです。
いかがでしょうか。今までの経験を振り返ってみると、うまく対応できている時は、いずれかのアクションがとれていたのではないでしょうか。今後の難しい場面を考えた時に、使えそうなヒントはありませんか?NOに対する苦手意識は減らせそうでしょうか。いずれも、曖昧な答えや、NOの先送りと比べると、相手の次の行動が生まれる、建設的な提案になっていることがおわかり頂けたでしょうか。
自分目線の半端な遠慮はかえって相手のデメリットが大きくなってしまいます。相手の次の行動を考えた、正しい配慮で、「次につながる」「信頼関係を深める」NOを実践しましょう。
著者プロフィール
大串 亜由美
外資系大手コンピュータ株式会社にて14年勤務後、コンサルティング会社勤務を経て、株式会社グローバリンクを創立。「国際的規模での人材活用、人材育成」をキーワードに、マネジメント、自己主張など、ビジネスコミュニケーション全般の、企業・団体研修、各種コンサルティングを手がける。