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厚生労働省

「社内でハラスメント発生! 人事担当の方」【第37回】継続した取り組みで、ハラスメントを許さない社風を作る―ケータリングサービス、 弁当の宅配・フードデリバリー、飲食業を行うS社

【第37回】
継続した取り組みで、ハラスメントを許さない社風を作る―ケータリングサービス、 弁当の宅配・フードデリバリー、飲食業を行うS社

取組のポイント 所在地

東京都

  1. 外部コンサルタントによる研修
  2. 全従業員へのアンケート実施
業種

ケータリングサービス、 弁当宅配・フードデリバリー、飲食業

従業員数

約85名

ビルマネジメント事業を行う企業グループの一員として、東京・大手町でケータリングサービス、 弁当宅配・フードデリバリー、飲食業を行うS 社。お客様との接点においてはカスタマーハラスメントのリスクが、また社内においては徒弟制度的なコミュニケーションでのハラスメントリスクがある中でのハラスメント対策についてお聞きしました。

社内外でのハラスメントリスクに対応する

弊社のおもな事業は、ケータリングサービス、 弁当の宅配・フードデリバリー、飲食店事業などになります。具体的には、会議やセミナーへのケータリングや、大手町・丸の内などのオフィス街で飲食店を運営しています。オフィス街ということもあり、繁華街にあるような飲食店よりはカスタマーハラスメント的な事案は少ない傾向にあると思いますが、カスタマーハラスメントがあった際には「1人で対応せず、必ず上長と2人以上で対応すること」など、対応のしかたをあらかじめ決めています。

また、厨房は料理人の世界で、今でも徒弟制度の雰囲気が残っています。過去にはパワハラ的な教育・指導法もあったと思いますが、現在ではそのようなことはありません。それでも、過去に弟子として厳しい指導を受けてきた人たちが、今では若手の指導にあたっているので、徒弟制度的な気質を受け継ぐことのないように「ハラスメントはいけない」ということを常に伝え続けることが大切だと考えています。

就業規則の見直しをきっかけに、ハラスメント対策に取り組む

弊社のハラスメント対策は、主に下記の4点です。

①就業規則の改訂
代表者(社長)名でハラスメント防止宣言を行うとともに、就業規則にハラスメント防止規定を盛り込みました。改定にあたっては、新しい就業規則を各職場に配布するとともに、幹部社員についてはあらかじめ幹部会議で周知し、幹部からも各社員に伝達するように指示しました。

②研修の実施
全従業員を対象に、外部コンサルタントによる研修を年に1〜2回実施しています。一般社員については、ウェビナーにて一般的なハラスメントについての研修を行いました。幹部社員については講師を招き、対面での研修を行いました。社外の事例なども参照しながら「こうした行為はハラスメントになる」、「これは指導の範囲内だ」といったことを具体的な事例をもとに伝えました。社員からは「もっと知りたい、もっと伝えてほしい」という積極的な反応もあれば「これもハラスメントになってしまうのか」と懸念する反応もありました。

③全従業に対してのアンケート実施
ハラスメントおよびコンプライアンスに関するアンケートを全従業員に対して実施しました。ウェブ上で回答できるようにし、また、調理などパソコンを使用しない職種でもアクセスできるように、スマホからでも利用できるようにしました。寄せられた回答や相談・報告については、すべてグループ本社のコンプライアンス部と共有しています。その中で内容が深刻で緊急に対応が必要なものについては、前述コンプライアンス部と協議しながら対応しています。

④ハラスメント相談・通報窓口の設置
社内だけではなく、安心して相談してもらえるように、社外にも相談窓口を設けています。先ほどのアンケートについてもこの社外相談窓口に対して回答する形になるため、回答しやすくなっているのではないかと考えております。また、社内相談窓口はグループ本社のコンプライアンス部と連携し、方針などについては適宜相談しながら対応しています。

加えて、厚生労働省が毎年12月に実施している「ハラスメント撲滅月間」のタイミングで、ポスターを掲示し、また社内ネットワークではハラスメント防止の啓発動画を紹介しています。

ハラスメント対策については「継続は力なり」だと思っています。セミナーなどの取り組みはずっと続けていくべきだと感じます。社員にとっては「またやってるよ」と思われるくらい、繰り返し研修やアンケートをしなければ、ハラスメントへの理解が深まっていかないと考えます。たとえば相手の立場に立って「この言葉を受けたらどう感じるのだろう」と立ち止まり、間を置いて考えながら発言することによって、 相当数のハラスメントはなくなると思います。私自身も、ハラスメントへの取り組みを継続していく中で、そうしたことに気づくことができました。ですので、「継続」が大切だということを皆さんにお伝えしたいと思います。

事例をお聞きして・・・

社員には「またやってる」と思われるくらい継続して、繰り返し啓発していかなければ、ハラスメントに対する認識が深まらない、というご指摘にはハッとしました。一度や二度研修を実施して、効果が出るものではなく、継続して取り組み続けることで少しずつハラスメントを許さない、という雰囲気が浸透していくのだと感じました。

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