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厚生労働省

「社内でハラスメント発生! 人事担当の方」【第35回】ハラスメント対策が、職場環境改善、さらには人材確保につながる―全国的に有名な温泉地で宿泊施設を運営するO社

【第35回】
ハラスメント対策が、職場環境改善、さらには人材確保につながる―全国的に有名な温泉地で宿泊施設を運営するO社

取組のポイント 所在地

神奈川県

  1. 就業規則の改訂でハラスメント撲滅を明記
  2. 労使会議、管理者会議で課題を共有
  3. 外部講師などとの関わりで風通しのよい職場づくり
業種

観光業(宿泊施設)

従業員数

約120人

全国に名が知られる温泉地で、老舗のホテルを運営しているO社。慢性的な人手不足に悩む観光業界ですが、求職者にとって魅力的な職場づくりへの取り組みが、結果的にハラスメントのない、今働いている従業員にとっても魅力的な職場環境にもつながったと、人事総務の担当者は話してくれました。

就業規則の見直しをきっかけに、ハラスメント対策に取り組む

弊社では、ひとつの事業所に120人が働いています。ほぼすべての社員が新卒採用です。年代の幅は広く、長年働いているベテランも、高校を卒業したばかりの社員もいますが、社員全体には「一つの家族」という意識が浸透しています。そうした社風ですから、基本的には職場環境は良好だと考えています。しかし、事業所が一つですので、異動などが少なく、職場環境に変化があまりないこと、また幅広い年代が同じ職場で働いており、様々な価値観を持った人が日々密接にコミュニケーションする必要があることなどから、トラブルが発生することもありました。実際に数年前、職場での人間関係のこじれから、上司が部下に対して暴力をふるってしまうという事例がありました。以前からハラスメントについては課題感を持っていましたが、2018年に労働基準法が改正されるタイミングで、就業規則を見直すとともに、職場環境を改善し、ハラスメントをなくすための取り組みを行うこととしました。

まずは就業規則ですが、これまでの就業規則はハラスメントについてのはっきりとした記述がなく、また懲罰についての規定もあいまいでした。そこでハラスメントの禁止、懲罰規定を明記しました。パワハラについてはもちろん、マタハラ、セクハラ、さらにはSNSやメッセンジャーなどでのハラスメント、いわゆるデジタルハラスメントについても盛り込みました。

情報共有の場を作り、ハラスメントを未然に防ぐ

また、年間休日を104日から110日に増やしました。ただし、その一番の目的はハラスメント対策ではなく、新卒者にとって魅力的な職場をつくり、人材を確保することです。しかし同時に、休日を増やすことで今働いている社員のメンタルヘルスを維持することがハラスメント対策になるという思いもありました。弊社は「職住接近」の社員が多く、特に若手は、ともすれば社員寮と職場の往復になってしまいがちです。仕事とプライベートの垣根なく同じ環境の中での生活を続けていると、一度人間関係のトラブルなどが発生してしまった場合、悪循環に陥り、ハラスメントや離職などにつながりかねないリスクがあります。休みを増やすことで、社員に仕事以外のところにも目を向けてもらうきっかけを作りました。

また、労使会議、課長以上を対象とした管理職会議を定期的に開催し、その場で職場の課題などを共有することで、風通しのよい職場づくりを心がけています。たとえば「あの部門は業務が立て込んでいて、雰囲気がピリピリしている」などといった情報を共有し、必要に応じて対応します。これもハラスメントを未然に防ぐために有効だと考えています。

「外からの目」も入れて、客観的、総合的に状況を把握

さらに外部講師を招聘し、月1回、接客スキルやチームビルディングについてのワークショップを行っています。ハラスメントへの直接的な対応というわけではありませんが、外部とのつながりが、職場の風通しをよくすることにつながっていると感じます。特にここ数年、依頼する講師の方を固定しているのですが、講師との信頼関係が構築され、社内では言いにくいことも講師には相談できる、というケースが出てきました。さらに弊社では法令で定められた定期的なストレスチェックを行う際に、実施事業者と年1回報告会の場を持ち、各部署について課題を共有しています。こうした外部からの視点も、職場の現状を把握しトラブルを未然に防ぐために有効だと考えています。

観光業界は慢性的に人手不足の業界です。人材確保のためには、求職者にとって魅力的な職場づくりが必要です。そのために、求職者にとって魅力的であり、今働いている人に長く働き続けてもらえるような職場環境を整える必要があります。弊社のハラスメント対策は、そうした職場環境改善のための取り組みの一環として位置づけられています。

今後は、カスタマーハラスメントへの取り組みを強めていければと思っています。観光業界は「お客様は神様」という意識がいまだに強く、お客様にはっきりとした対応をしにくい風土が残っています。しかし価値観の多様化が進み、お客様の要求が多様になっていく中で、すでにカスタマーハラスメントに該当するのではないか、というようなトラブルも起こっています。どのように対応するべきか、社内で検討を重ねていきたいと思います。

事例をお聞きして・・・

ハラスメント対策が職場環境改善、そして人材確保につながっているというお話でした。少子化で競争が激しくなる人材市場の中で、競争力を確保する意味でも、ハラスメントのない会社であること、万一ハラスメントが起こったとしても、きちんと対応する会社であることがアピールポイントになるという視点は、人材確保に切実に課題を抱えるこれからの中小企業にとって必要なものと感じました。

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