【第32回】
職場環境改善の取組みとして ―内科とリハビリテーションを主とするT病院
取組のポイント | 所在地 |
兵庫県 |
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業種 |
病院 |
従業員数 |
約220人 |
比較的規模が小さい専門病院であるT病院。「うちの病院にはハラスメントはない」と思っていたという副院長兼看護部長と事務の統括責任者の方にお話しを伺いました。
医療安全の聞き取り調査の中で相談を受けたことがきっかけ
当病院では、病院長や産業医に加え、各職場の管理職等が集まる「労働安全衛生委員会」を設置しています。労働安全衛生委員会では、5年ほど前から、職場環境整備の課題の一つとしてワークライフバランスの改善について取り組んできました。当病院には労働組合がなく、労働安全衛生委員会は職場環境の諸問題について話し合うのに適した場でしたので、ハラスメントの問題も労働安全衛生委員会が主体となって取組みを行ってきました。
労働安全衛生委員会の副委員長で事務局も務めていた人が、医療安全の責任者でもあったのですが、彼が医療上の課題について職員から聞き取り調査をしている中で、スタッフから『同僚に無視されているのでは?』という相談があったそうです。それを労働安全衛生委員会で話題にしたところ、「うちの病院にはパワハラはないと思うが、もしかしたら感じている人もいるかもしれないので、アンケートを採ってみよう。」ということになりました。
意外なアンケート結果で取組みの必要性を実感
アンケートは全職員を対象に、無記名で所属名なしで行い、所属長を通さずに直接労働安全衛生委員会の副委員長が回収・集計しました。 アンケートの結果は思ってもいないものでした。「パワーハラスメントを受けたことがある」と「受けているのを見たことがある」を合わせると、約40%もありました。また、パワーハラスメントと言えば、上司が部下に対してするものと思っていたのですが、同僚から受けたという回答が上司とほぼ同じ40%にもなっていました。これには少し驚きました。
この結果を受けて、労働安全衛生委員会として、取組みを始めることになりました。
まずは規定を作ろう
パワーハラスメントに関しては特に規定がなかったので、労働安全衛生委員会で検討し、就業規則にパワーハラスメントの罰則規定を設けるとともに、委任規定を設け、新たに「パワーハラスメント防止に関する規程(案)」を作成しました。 次回、就業規則を改定するときに同時に制定することを予定しています。
看護部は独自で勉強会
看護部では、アンケートの結果について師長会で意見交換を行いました。また職員の目標管理を行うため、1年に2~3回は各師長が個人面談を行っているので、その時にパワーハラスメントの問題がないか、確認をするようにしました。
その中で、医療安全を推進する委員の育成中に、非常に熱い気持ちで医療の安全を守らなければという気持が芽生え、人の命を預かっているという責任感から、マニュアルどおり仕事を行うよう指導する際の話し方等指導の方法に問題があることがわかりました。
そのため、委員にはコミュニケーションやアサーテイブを用いての会話の必要性について指導するとともにその勉強会を行い、注意した後のフォローの大切さを指導しました。
また、該当部署やリスク管理に関する委員会等でマニュアルの厳守を再確認するとともにパワーハラスメントにならない指導方法について周知徹底を行いました。
啓発のために「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」を活用
職員は、アンケートを実施したことでパワーハラスメントに対してある程度の関心を持つようになったと感じていますが、より浸透させるために、厚生労働省のホームページからダウンロードできる「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」を各部署に配布して、これを参考にして、今後どのような対策を取るべきなのか、意見を出してもらうようにしました。
ハンドブックに取り上げられている事例からヒントを得て「院内ホームページに匿名のメールボックスを設けて相談を受け付ける」とか「管理職及び一般職を対象に講演会や研修会を実施する」といった意見が多数寄せられました。これらを一つ一つ労働安全衛生委員会で取り上げ、検討しています。
事例をお聞きして・・・
働きやすい職場づくりを目指して、労働安全衛生委員会で様々な課題に取り組む中で、パワーハラスメント対策も検討され、取組みが行われていました。取組みを進める中で労働安全衛生委員会の中心メンバーであった副委員長が退職し、また院内の体制が変わったということですが、ハラスメント対策の活動を組織的に継続する努力をしているというお話に明日を感じました。