【第25回】
社長の陣頭指揮で始まった ―電気製品を製造するB社
取組のポイント | 所在地 |
青森県 |
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業種 |
電気機械器具製造業 |
従業員数 |
約150人 |
「モノ作りのリーディングカンパニーを目指して、快適な職場環境を作るために全社を挙げてハラスメント防止に取り組む」という社長の指示の下、活動を始めたB社。
電機業界は業界全体でモノ作りの海外移転を進めており、会社の規模も縮小傾向にある中で、お金をかけない活動を工夫されているという、総務担当者にお話しを伺いました。
メンタルヘルス研修から始めた
2010年に、主任以上を対象にメンタルヘルス研修を実施しました。いきなりパワーハラスメント防止研修などというと、何があったのかと憶測を呼んでしまうので、少しオブラートにくるんだ形で始めました。その後、対象を女性リーダーに拡大し、職場でのコミュニケーションを改善するという目的で傾聴のスキルを高めるための研修を実施しました。
さらに、2011年にはセクハラ・パワハラ防止研修を、派遣社員を含めて全従業員に実施。製造ラインがありますので、早朝に食堂で開催しました。この時「パワハラって何?」という小冊子を全員に配布しています。
「セクハラ・パワハラ撲滅委員会」が窓口
研修の実施と同期して、「セクハラ・パワハラ撲滅委員会」を社長を委員長として立ち上げました。委員(相談員)は各職場から男女複数名、労働組合からも男女2名選任してもらい、辞令を交付して守秘義務も課しています。
委員の役割は職場の相談窓口で、情報収集をし、事案が発生したら管理部長に報告することになっています。管理部長が、さらにヒヤリングをして状況調査をする必要があるのか、人事として対応するのか、部長会などで検討すべきかなどを判断します。
窓口を明確にすると、何かあった時にどこに言ったらよいか迷わなくてすみますので、各職場に委員のリストを掲示しています。
委員には相談担当者向けの研修を受講してもらい、相談対応マニュアルも配布しています。
さらに、社長と管理部の相談員には、ハラスメントの予防や解決の取り組みについての研修も受講してもらっています。
最近、派遣社員同士で感情の行き違いからパワーハラスメントの訴えがありましたが、相談者が女性だったので、派遣会社、現場、管理部門ともに女性の委員が対応しました。傾聴や相談対応の研修をしっかり受けていたことで冷静に対応でき、とても役に立ちました。
社長自らが社内の情報収集
この取り組みを始めた前社長は、毎月1回、オフサイトミーティングと称し、階層別のメンバーとフランクな意見交換会を行い、現場の状況を聞いていました。社員としては、社長に直接様々な話を聞いてもらえることで満足感がありました。
2年前に社長が交代しましたが、現社長は、ご自分でどんどん現場に入って行って、社員と気さくに話をしています。
また、毎年、無記名の従業員満足度アンケートを実施していて、ハラスメントの有無についてもチェックするようになっているほか、自由記述欄にも記入できるようになっており、この欄に様々な意見が書き込まれていて、社員の気持ちのはけ口になっていると思っています。ただ、無記名とはいえ、所属などを記入するので、場合によっては記入者が特定されてしまうことを恐れて、記述を控えている人もいるかもしれないと思っています。
さらに、社員への周知、啓発のために資料を作成して、食堂に掲示しています。これらは、セクハラ・パワハラ撲滅委員会の名簿とともにイントラネットにも入れてあり、いつでも見ることができます。
限られた予算の中で継続して活動していくことが課題
これまでも予算が限られている中、無料のセミナーを利用したり、低価格で研修をしてもらうように交渉したりなど、工夫をしてきました。啓発資料も自分たちで制作してきました。これまではかなり集中してやってきたので、社員の間でのパワーハラスメントに関する認識が広がり、風通しのよい職場になってきたように感じています。以前は「あそこの課長は厳しいらしい」とか、「あの係長のところはきついぞ」というような声がありましたが、最近では聞かなくなりました。これも活動の成果だと思っています。
今後も予算は限られているので、その中でどのように活動を継続するかが問題だと思っています。会社がパワーハラスメント対策に継続して取り組んでいるということが見えるようにする必要があるので、工夫しながら取り組んでいきたいと思っています。就業規則などの規定の整備やポスターの掲示なども検討課題です。
事例をお聞きして・・・
ハラスメント対策などの取り組みは、会社の業績が伸びているときには活動しやすいものですが、業績があまりよくない時期には対策が滞りがちなる例が多いと思います。しかし業績が停滞している時ほど、社員の心も後ろ向きになりがちなので、ハラスメントの問題が起こる可能性が高くなります。そういう時こそ見える活動が必要だということを、しっかり認識して取り組んでおられました。
「継続的な取り組みを見えるようにする。」 見える活動の大切さを改めて認識しました。