【第22回】
職員同士の良好な関係構築がテーマ ―日常的に職場環境改善に取り組む社会福祉法人
取組のポイント | 所在地 |
兵庫県 |
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業種 |
社会福祉施設 |
従業員数 |
約130人 |
3か所で様々な高齢者福祉サービスを展開するP法人。職場のコミュニケーションの活性化を図ることを目的にパワーハラスメント防止にも取り組む副施設長にお話を伺いました。
年2回のマネジメントレビューで、理事長から毎回メッセージ
ISO 9001 の認証を受けていますので、年度目標を設定し、必ずレビューをする仕組みが法人内に徹底しています。その一環で、各事業所の責任者が、年に2回、トップである理事長に事業所の運営について報告をし、評価をもらう「マネジメントレビュー」という機会があるのですが、その際、毎回、理事長からは「お互いのコミュニケーションをよくとりなさい」「連携を忘れないこと」「顔の見える環境づくりをしなさい」など、職場のコミュニケーションを強化するようなメッセージが出されてきました。この内容は、議事録にまとめ、職員で回覧しています。
こうしたトップのメッセージに基づいて、より良い職場環境を目指すための活動をしてきましたので、特にハラスメントを意識したものではありませんが、こうした活動がハラスメントの防止に役立っているように思います。
全職員の人間関係を把握して人事管理
職員の採用時、必ず副施設長が面接をし、仕事をする上で何か問題があればいつでも相談するように伝えています。また、日常的に各部署を巡回し、パート職員も含めて、何か問題がないか、声をかけています。
また、全部署で職員面談を行っていますので、何か問題があれば、副施設長に報告が上がってくるようになっています。
人間関係で問題が起こると、そのことによってサービスがうまく回らなくなり、利用者の方に迷惑がかかるので、小さなことでもすぐに対応するようにしています。問題を解決するためには、なるべく早いうちに双方から話を聞くなど、初期対応が非常に大切だと思います。
人が集まればどうしても職員同士の相性や「好き、嫌い」ということは必ずあります。そこで、法人内の人間関係を把握し、人事異動ではそういう面も配慮しています。現在の従業員規模だからこそできることかもしれませんが、こういうこともハラスメントの予防になっていると思います。
職員の定着率がとてもよくなった
毎年、職員アンケートの中で職員の満足度を図っています。今の職場に対しての満足度を評価してもらうのですが、低い点数をつけた人については、話を聞き、新たな目標設定や配置換えなどの対応をしています。
また、不定期ですが、各部署がISOの目標設定として、職場環境改善などを挙げ、自発的にアンケートを実施しており、職場内の状況を把握し、課題があれば対処するようなことも行っています。
頻繁に状況を把握し、早いうちに対処をしているからでしょうか、法人内ではあまり問題は起きていません。
色々な要素が複合的に効果を出しているのだとは思いますが、最近では、職員の定着率がとてもよくなりました。一年前に在籍した職員の残存率が95%で、退職者も配偶者の転勤などのやむを得ない理由でした。数年前には年間10人も辞めてしまうことがありましたので、職場環境改善の成果だと考えています。
理事長からの指示が拠りどころ
ISO9001 の仕組みとして、トップの方針があり、各部署でそれぞれに目標を設定してレビューを行うというのが基本ですが、理事長から常に「お互いの理解を深めるために交流を重ねてほしい」というメッセージが出ているので、それぞれの立場でも取り組んできています。これからもその理念に向けて、職場の雰囲気が良くなるような活動を続けていきたいと思っています。
事例をお聞きして・・・
福祉の職場では、基本的にみなお互いを「やさしい」とおっしゃるのですが、それでも人間関係の問題は発生することがあります。一人ひとりの顔が見える規模だからできる、血の通った取組が、職員の満足度を上げ、働きやすい環境を作り上げていることを実感できました。