【第19回】
労使で協力して取組 ―製造支援ソリューションを主な事業とするG社
取組のポイント | 所在地 |
京都府 |
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業種 |
電気機械器具製造業 |
従業員数 |
約730人 |
製造支援ソリューションを主な事業とするG社。平成20年頃から女性を積極的に採用し始め、セクハラ対策の必要性を感じるようになり、同時にパワハラという言葉も使われ始めてきたことを受け、セクハラだけでなくパワハラも含めたハラスメント防止の取組を始めたとのことです。今回は職場環境改善に取り組まれている人事部長と人事担当者にお話を伺いました。
まずは啓発活動
取組を始めるには、まずハラスメントについての従業員の理解を深める必要がありますので、社長から「ハラスメント防止に取り組む」という姿勢を社内WEBサイト、全体の朝礼などで宣言してもらいました。それを受けて、毎年ハラスメント啓発教育を受講対象や内容を変えながら実施しています。また、グループから選抜されたメンバーで実施する階層別研修でも、テーマとしてハラスメントを取り上げています。
職場全体への啓発として、ポスターを掲示していますが、ずっと同じ内容だと飽きてしまうので、何種類かのポスターを用意して、2か月に1回、貼り替えています。
昨年には就業規則を全面改訂して、ハラスメント防止に関する項目をきっちり盛り込みました。また、コンプライアンス規定の手引きを作成して、派遣社員を含む全従業員に配布しています
従業員代表との良好な関係が取組を助ける
当社には労働組合がありませんので、従業員代表たちと労使懇談会や懇親会を必ず2か月に1回開催し、円滑な労使関係を築いてきました。従業員代表の組織がしっかりできていて、社内の情報や意見を的確に吸い上げてくれますので、何かあればすぐに対応できる体制になっています。直接言いにくいような案件は従業員代表を通して上がってくるのでかなり早い時点で対応できています。
さらに、従業員代表と社員10名程度が自主的活動として社員通用口で朝の挨拶運動を行っていたり、各部門で従業員代表が中心となって自ら企画して会社周囲のゴミ拾いやバドミントン大会などのイベントを実行するなど、積極的に職場環境改善のために活動しています。
相談窓口は健康相談室。労務担当者も何でも相談対応。
以前から設置されている社内の健康相談室と連携を取り、産業カウンセラーでもある相談担当者が、身体の健康だけではなく、メンタルヘルスやハラスメントに関する相談も受け付けるようにしています。健康相談室に直接行くことができない地方の事業所では、労務担当者がまずは話を聞いて、相談内容を健康相談室に報告するという形で橋渡し役をしています。
また、労務担当者への相談用直通電話やメールアドレスを設けていて、何でも相談を受け付ける体制を取っています。「人事」という名称を表に出すとハードルが高いと感じる人も多いので、「労務」という言葉を表に出し、「労務のおっちゃん」の似顔絵でポスターやカードを作って、気軽に相談できるような雰囲気を作っています。
相談内容によって解決方法は変わってきますので、難しい内容になってきますと労務関係に強い特定社会保険労務士や弁護士の方にバックアップしていただける体制になっています。
社員とのコミュニケーションの機会を増やす
個別考課の目的でもあるのですが、従業員に対して目標管理(MBO)やキャリア・デベロップメント・プログラム(CDP)といったコミュニケーションツールを導入しています。それにより、上司と部下の面談の機会が増えることで職場内での意思疎通の強化が図られています。契約社員に対してもツールに基づいた考課・更新面談を徹底し、コミュニケーションの機会を持っています。こうした活動が、遠回りのようですが、相互の信頼関係の構築につながり、ハラスメントの抑止になると思っています。
ハラスメントについての正しい理解が大切
取組をしていると、ハラスメントについての誤解が多いように思います。ちょっと不愉快なことがあると何でもハラスメントだと上司を脅したり、逆に上司がどこまで指導してよいのか迷ったり、ということがあります。パワハラの定義を明確にして従業員に正しい知識を植え付けていくことが大切だと思っています。コミュニケーションツールなどを利用し、従業員と共通の価値観を持ち、共感を深めて会社の団結につながっていくような活動をどんどんやっていきたいと思います。
事例をお聞きして・・・
働きやすい職場作りを目的として、従業員代表を通して社員との協力関係を上手に築かれていました。会社側も従業員の目線で相談しやすい環境を作り、コミュニケーションの機会を増やすような制度を導入して、従業員との信頼関係の構築に努力されているなど、ハラスメントの問題を根幹から解決しようという強い意志を感じました。