【第18回】
ローテーション勤務で忙しい中での研修実施に苦労 ―急性期医療に取り組むM病院
取組のポイント | 所在地 |
群馬県 |
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業種 |
病院 |
従業員数 |
約300人 |
急性期病院ということで、非常に忙しいM病院。人の命に関わるので、厳しいことを言うこともあるとのこと。そうした中でハラスメント防止に取り組む総務課長にお話しを伺いました。
最初にルール作りから
当院と関係のある大学病院がセクシュアルハラスメントについてのリーフレットを作成したことを受けて、当院でもセクシュアルハラスメント対策への取組を始めることになり、まず、就業規則に禁止規定を盛り込みました。その後、パワーハラスメントも社会問題になってきたので、パワーハラスメントも含めて「ハラスメント」として就業規則に禁止規定を設け、さらに、平成19年に、より具体的な内容を盛り込んだハラスメント防止規程を制定しました。
ハラスメント防止規程が制定されたことを受けて、各職場長が集まる運営委員会でトップからハラスメントに関する注意喚起があり、職場長が各部署に持ち帰ってスタッフ全員にその内容を伝達しました。
相談窓口としては、内部の職員に相談するよりも外部の方が相談しやすいとの判断で、以前からお付き合いのあった社会保険労務士の方に相談対応をお願いしました。相談窓口の連絡先はハラスメント防止規程の中に盛り込んでおり、規程は各部署に配置して周知しています。相談があった場合は、当院の総務に報告が来るようになっていますが、今のところ、報告は上がってきていません。
パワーハラスメントのような事案の発生で研修を開始
院内のある部署でパワーハラスメントのようなことが起きているという話を副院長が聞いたことがきっかけで、院内の教育委員会でパワーハラスメント研修を実施することが決まりました。研修をより実践的にするために、事前に全職員を対象にパワーハラスメントについてのアンケートを実施したところ、14件の報告がありました。その内容については、研修の中で取り上げ、実際にどのような問題があるのかを管理職や医師に知ってもらうようにしました。
急性期病院ですので、職員は交代勤務ですし、常に患者さんがいる環境なので全員が職場を離れることもできないため、研修の仕方には苦労をしています。開始時間を18時以降とするなど工夫をしています。他の研修でも同じですが、何度も研修を実施することもできないので、参加できなかった職員に対しては、資料を職場長に渡して部署内で周知してもらうようにしています。
新入社員や中途採用の職員には、年2回、オリエンテーションを行い、その中でハラスメントに関する研修をし、規程の内容などについても説明をしています。
病院利用者の方が投函できる「意見箱」も情報源
当院では、入院、外来を問わず患者さんやその家族が病院に対していろいろな意見を気軽に投函してもらえるように「意見箱」を院内に設置しています。中には「医師が看護師を患者の前で怒鳴りつけている。」というような投函もありました。病院という職場では、ちょっとしたミスが人の命に関わることもあるので、医師が看護師に厳しいことを言うこともあります。当事者側はハラスメントのつもりはなくても、周囲がそのように感じる場合もあり、難しいところですが、意見箱に投函された意見は、全職場長で回覧し、内容によっては職場長が該当する職員に対して指導を行い、その対応内容を院長に報告しています。
離職率が気になる
ハラスメント問題があると職場の雰囲気も悪くなるので、離職率が高くなると言われています。現状、当院でもハラスメントの問題だけではなく複合的な要因もあると思いますが、特に看護職の離職率が高いことが気になっています。離職率の増加は、直接、病院の経営に影響があるので、これを下げるために対策が必要と考えています。今年は、職員の面談を実施する予定ですが、直属の職場長には言いづらいこともあると思うので、総務で直接話を聞くことを考えています。
事例をお聞きして・・・
業務も忙しく、しかも現場を離れることができない職場での研修の苦労が覗われます。事前にアンケートを実施して院内の具体事例をもとに研修するなど、せっかくの研修の機会をできるだけ身につく内容にしようという意気込みが感じられました。