【第11回】
当事者が辞めずに活躍してくれることが嬉しい ―プラスチック製品を製造するC社
取組のポイント | 所在地 |
愛知県 |
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業種 |
化学工業 |
従業員数 |
約450人 |
プラスチック製品を製造するC社。7か所に工場があるため、全員を集めて研修することができない状況の中、社内周知に工夫していると言う。具体的な取組について、総務担当の方々からお話しを伺いました。
パワハラに関する相談を契機にスタート
平成21年ごろ、社員からパワハラに関する相談がありました。相談内容はさほど深刻なものではなかったのですが、当時社内には何がパワハラなのかという判断基準がなかったことから、社内のホームページにパワハラに該当する事例を掲載することから始めました。その後も社員からの相談があり、平成22年に初めて外部から講師を招いてハラスメントに関する研修を実施しました。
ホームページを利用して社内に周知
当社の場合、製造業ですので製造ラインを止める訳にはいきません。研修も各工場で別々に実施し、しかも全員ではなく各課から2名という形で参加してもらうようにしました。また、パワハラに関する書物を参考にして社内教育資料を作成し、新人研修を実施すると同時に、社内ホームページにも「ハラスメント対策ページ」を設けて、ハラスメントとはどういうものか、ハラスメントが起こったらどう対応するのか、相談窓口の案内、ハラスメントの加害者にならないための事例紹介等を掲載して、社内に周知しています。
平成24年に厚生労働省が「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告」を発表された際には、パワハラの概念を資料に加え、管理職に閲覧するよう指示をしています。

相談窓口の案内は誰もが目にする場所に掲示
相談窓口は、本社と各工場に原則男女各1名ずつ相談員を置いています。本社の担当は外部の相談者研修を受け、それをもとに「ハラスメント相談記録」という書式を作成して各担当者との勉強会を行い、窓口担当の精神的負担を軽減しています。
相談窓口は一覧にして社内ホームページに掲載するだけでなく、ポスターを作って、社員の誰もが行く休憩室やトイレに掲示しています。みんなが頻繁に目にするので、会社としてハラスメント防止に取り組んでいるというアピールになり、かなりの抑止効果があると思っています。
相談窓口が周知されたことで、一時、相談が増えましたが、それは声を上げやすくなったからでしょう。最近では、社内でハラスメントは賞罰委員会の対象となることも周知され、ハラスメントはいけないことだという認識が徹底してきているようで、相談もほとんどありません。
実態の把握に「自己申告シート」を活用
最初にハラスメント対策に取り組み始めた時、全社員を対象にセクハラ・パワハラに関するアンケート調査を行いました。そのとき上がってきた事例は、すでに把握済みの内容がほとんどでしたが、総務部長が一つ一つ電話をかけて確認をしました。アンケート調査の実施はその時のみです。
代わりに、毎年1回、社員全員が「自己申告シート」というものを提出することになっていますが、そこにハラスメントの有無についても記載するようにしました。何か問題になるような記述があれば、すぐに本社の総務部長が本人と連絡を取ったり、事業所長と協議するなど、素早く対応をしています。
事案に対応した結果、当事者双方が会社に残り、今も活躍している
実際の相談案件では、当事者双方から事情を聴いて対応するケースもあります。ある例では、上司の話し方が原因で精神的に落ち込み、「辞めたい」という状況でした。一方、上司は普通に仕事の指示をしているつもりだったのです。双方の話を聞き、上司の人事異動も決まっていたことから、相談者にもそのことを伝えたところ、もう少し頑張ってみるということで、少し休みはしましたが、会社を辞めることもなく、今は元気に働いています。上司も異動先で活躍してくれています。こういう事例は担当者としてとても嬉しいですし、取組をしていて本当に良かったと思います。
事例をお聞きして・・・
事業所が分散していると教育の徹底や情報の周知が難しいものですが、様々な工夫でそれを乗り越えていらっしゃいました。特に相談窓口の案内を誰もが見える場所に掲示することで、会社の本気度を示すと同時に、相談しやすい雰囲気を醸成していることは、多くの企業で活用できる方法だと思いました。