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厚生労働省

「ハラスメント基本情報」【第33回】 「事務員に対し事務室外での作業への配転命令が権利の濫用にあたるとして無効と判断された事案」 ― オートウェイ配転無効確認等事件

  • 過小な要求型

【第33回】
事務員に対し事務室外での作業への配転命令が権利の濫用にあたるとして無効と判断された事案

結論

本件配置転換(配転)命令は権利濫用で無効。

事案の概要

Xは、タイヤ販売会社Yで、会社ホームページの管理など、主としてパソコンを使用する事務作業を担当していたところ、電話での対応等を巡って、Y社の代表取締役であるAと口論となり、AはXに対し、解雇する旨を伝えた。Xは解雇に納得できず、労働組合に加入するほか、仮処分を申し立てるなど当該解雇の効力を争い、結局、Y社は当該解雇を撤回した。Y社はその後、Xを、タイヤ梱包作業・積み降ろし作業といった事務室外での作業へ配転させ、原告のみ梱包作業場に机と椅子を設置したところ、Xは当該配転命令の効力を争った事案。

判決のポイント

1.配転が権利濫用にあたるかの判断基準

被告(Y社)は無制約に配転を命じることができるものではなく、当該配転を命じる業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該配転が他の不当な動機・目的を持ってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど特段の事情がある場合は、当該配転命令は権利の濫用に当たる。

2.本件の配転命令についての権利濫用への該当性

Y社が主張するような、本件配転を命じる業務上の必要性(電話応対での不手際による配転の必要性など)はない。

タイヤ梱包場に原告が使用する机と椅子を設置し執務させることについて必要性、合理性なし。

被告は、原告が事務室へ立ち入ることを禁じるよう指示していた。

(ⅰ)原告に本件配転を命じる業務上の必要性は乏しく、解雇が撤回されて復職した原告に、これまで女性が担当したこともない、タイヤを集積場所に転がしていきラベルを上にして並べる作業等に従事するよう命じることには何らかの意図を感じる。

(ⅱ)業務上の必要性から本件配転を命じたにすぎないのであれば、原告のみタイヤ梱包作業場に机と椅子を設置したり、原告が事務室へ立ち入ることを禁じるよう指示するような必要性はおよそなかったのであるから、業務上の必要性以外の理由によって本件配転を命じたことが強く疑われる。

(ⅲ)(本件においては、)Aと口論になった原告に即解雇を告げたものの原告が労働組合に加入してその効力を争い、被告の本社前での抗議活動等も行われ、仮処分の手続において和解が成立せず被告が一方的に解雇撤回を余儀なくされたという一連の経過がある。

以上の(ⅰ)~(ⅲ)からすると、被告としては、解雇撤回を求める原告の要求を受け入れて復職させざるを得ないとしても、原告に対する嫌悪感は収まらず、従業員の中に原告と同じ職場で勤務する事を快く思っていない者もいたこともあり、できるだけ原告を事務室から遠ざけるため、また、原告にとって不本意な仕事を与え、あわよくば孤立感を感じた原告に自主退職を余儀なくさせることをも意図して、本件配転を命じたというべき。

上記のような不当な動機・目的を持ってなされた本件配転命令は権利の濫用として無効というべきである。

コメント

自主退職させることを目的とするなど、不当な動機・目的をもってなされた配転命令は無効になる

最高裁判所は、転勤命令につき、①業務上の必要性が存しない場合又は②業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等について、権利濫用になると判断しており(東亜ペイント事件 最高裁昭和61年7月14日判決)、本裁判例でも同判決が参照されています。

その上で裁判所は本件において、会社が主張する、本件配転命令の業務上の必要性を認めず、加えて、本件配転命令は、原告を事務室から遠ざけること、また孤立感を感じさせ自主退職を余儀なくさせることをも意図するという不当な動機・目的をもってなされたものとして、本件配転命令を権利濫用により無効と判断しました。

以上を踏まえますと、配転を命じるにあたり留意すべき点として、以下の点が挙げられます。

(1)業務上の必要性がないにもかかわらず配転を行うこと、また自主退職させることを目的とするなど不当な動機・目的をもって配転を行うことは避ける。

(2)不当な動機・目的の有無が争点になった場合、その有無の判断は、通常、客観的状況からなされ、具体的には以下の事情などが勘案される。
① 同様の職務への配転が、従前も同種従業員についてなされてきたか
② 配転後における当該労働者の取扱い
③ 配転に至るまでの間の当該労働者とのやり取り

 

著者プロフィール

荻谷 聡史(おぎや さとし)
安西法律事務所 弁護士
2008年 弁護士登録